2022年4月9日

ピノキオ幼稚園にようこそ

ピノキオ幼稚園にようこそ

 

                        園長 竹田 真木生   2022/4/9

 

 新しい春が来て、子供たちは、これまで家庭の中だけで大きくなって、はいはいから自分で立ち上がり、歩き、言葉を発し、家族とのコミュニケーションの能力を獲得してきましたが、4月からは幼稚園で、お母さんから離れ、集団生活が始まります。この3-6歳の時期の大事なことは、言葉と会話の技術を学ぶこと、そして人間として集団生活のルールと他の人たちへの思いやりを学ぶ、ということにとなります。体も大きくなって、音楽や運動の幅も広がります。人間の体というのは90兆の細胞からなっており、それらは受精に引き続いて増殖、分化し、そしてやがて老化がはじまり、死がやってきます。配偶者を迎え、子供を産み育て新しい世代にバトンを渡していかなければなりません。この時期には、神経系特に脳を構成する神経細胞が爆発的に大増殖をする時期です。そして、その細胞は、刺激と経験によって刈込みが行われて機能的な完成に向かっていきます。神経細胞は、長く伸びた特殊な形態のゆえに、一度分化が起こると再生はできません。だから、脳の形成にはこの時期ほど重要な時期はないのです。刺激によって形成されたネットワークは、経験によって確認され、強化され、不必要のものは自殺の機能によって誘導された細胞死によって、除かれていきます。言葉は、字を見て目から、言葉を聞いて耳から、そして声にして語る運動から入力され、それぞれ相互チェックを経過して意識され、概念として完成されます。さらに概念間の関係性をへて、哲学として進化していきます。一つ一つの学びは、すべて連関され強化されていきます。脳というのはとても可塑的にできています。

 

私は7年半アメリカで大学生活を送りましたが、今のバイデン大統領の地元のデラウェア州にいた時にいわゆる下宿生活をしたことがあります。その、大家のおばさんは特殊教育(Special education)の専門で、ハンディキャップのある子たちの学校で教えていましたが、時々、家で子供たちの集まりを開いていて、子供たちはまだ小さいうちからみんなの前で意見を言う訓練(public speaking)をやっていました。言語を正しく学習したら、それをつかって人の前で自分の意見を堂々と述べること。これも一つの訓練です。大事なことは、いろいろなルートで行われる学びを相互にチェックして確認することです。そのことで、一つ一つの学びの意味と、その関係性の中でそれぞれの学びの深い洞察を確認することができるのだろうと思います。

 

ピノキオ幼稚園にはいろいろなタイプの絵本(紙芝居も)があります。それを使って、絵を観たり、字を目で追ったり、耳で聞いたり、覚えたり、読んだりと、いろんな風に活用してください。子供たちのレベルではむつかしい本もありますが、これはお母さん向きに用意されてあります。子供の本というのは大人にとっても心が洗われるようなものが多く、世界中で読み伝えられています。これをきっかけに、おかあさんが自分のお話を作ってあげるとよいと思います。お母さんの人生や家族の辿ってきたファミリーヒストリも盛り込んでいくと親子の相互理解が進むでしょう。子供の実名を入れた童話を聞かせてあげられたら子供たちは喜ぶでしょう。紙芝居や、歌を歌うのもよいでしょう。それにハーモニーをつけたり、楽器の伴奏をつけるのも面白いです。いろいろな形でメッセージを伝える手段を学びましょう。人間には、好き嫌いがあるし、向き不向きもあるだろうから、どれをどれくらいやるかは別にして、なんでもやってみて好きなもの、好きなことを自分で選べるようにして上げてください。

 

大きくなっていくときには、集団の中で暮らしていくことになるので、集団の中で学ぶ規則や、その理由、思いやり等を学んでいかなければなりません。生命の形、尊厳を自然の中で学んでいきましょう。いろいろな生き物はそれぞれが特異的で個性を持ちながら生きています。その中で、その個体、群集、種、もっと大きな生態系が果たす役割もあります。それらの、価値と美しさを学びましょう。生きていくためには他の生命を餌として消費していかなければなりません。無意味な消費(浪費)を避けて、すべての生命が分かち持つ地球の生態系を守る道を探していきましょう。地球の温暖化やプラスチック汚染、化学汚染なども重要な問題です。野生生物、地球のいろいろな住民と共存のルールを学ぶことも次世代の重要な使命です。

 

大事なことをまとめてみます。

 

1、いろんな言葉を会話の中で学んでいく

2、言葉の本当の意味、深い意味を考える

3、学んだ言葉をいろんな形で使ってみる(読む,書く、喋る、聞く)

4、実際のものを見る(見たものは信じる)

5、見たもの、経験したものを言葉につないでいく

6、友達を作ろう、友達と意見を交わそう。家族と語ろう。自分の主張が理解されるか

7、自分の意見と挑戦する心を持つ。自分が正しいと思うことをやってみよう

8、やる前によく考える。考えて決めたら失敗しても後悔しない。しかし、失敗ならばなぜ失敗したかよく考える。失敗は繰り返さない。

9、規則正しい生活をして、よい生活のサイクルを作ろう。生活リズムがおかしくなると、いろいろな変調が起こります。起きられなくなる、朝気分が悪い、風邪をひきやすい、怒りっぽくなる・・・

10、スマホやゲームに没頭しない。脳の発達に悪影響が出るという発表もあります。

 

元気で頑張ってコロナを追払い、充実した1年を送りましょう。Bon Voyage