2019年10月4日
忙しい夏が過ぎて
夏の星座が移っていって、秋の星座が動いてきました。ヘラクレス座と夏の大三角が、西に姿を隠し、替わりにつながれたアンドロメダ姫とそれを襲う海獣(クジラ座)と翼のある天馬ペガサスにまたがる。勇士ペルセウスが昇ってきます。ぺガサスは四角い星の配置があって、ペガサスの四辺形と呼ばれており見つけやすい形になっています。アンドロメダ座の星雲は、銀河に一番近い小宇宙で、何億年か先には、太陽が膨張してきて地球の軌道に入ってくるだけでなく、銀河系がアンドロメダと融合するという恐ろしい予想もあります。望遠鏡があればこの星雲を見ることが出来ると思います。ぜひ見てください。
暑い夏の間、皆さんお元気でおすごしでしたか?私は7,8,9月かなり忙しい時期を終えて、一息ついています。7月は重慶の国際学会に呼んでもらい10日間滞在してきました。立派なホテルで若い研究者や学生たちが活発に発表し、とても立派な学会でした。日本からは私以外、招へいは1名だけ。一般参加も0でした。後援学会は、アメリカやヨーロッパの昆虫学会や国際機関が入っていましたが、日本の学会の関与のあとはほとんどなく、寂しいことです。国からの科学予算が先進国では増勢ですが日本では毎年減額になっています。それに比べ、中国では、巨大な予算と、圧倒的な人員で、驀進しています。あっという間に置き去りにされてしまいました。おそらく、それすらも、認識されていないのだろうと思います。
8月は下旬からアメリカ東海岸にアメリカシロヒトリとコオロギの採集に行ってきました。昨年、少し危険な出来事があったので、今年は息子を運転手に連れていき、エリアも小さかったので昨年に比べとても楽で、アメシロはたくさん採れたのですが、最終的に日本に運べず、その代わりにコオロギは採れたので、目的達成率は40%くらいでしたが、マンハッタンのウェストサイドにあるアメリカ自然史博物館、渡り鳥の中継点である、デラウェア州のボンベイ・フック、ニュー・ジャージー州のケープ・メイといったbirderたちの聖地みたいな場所を訪れ、昔の友達を訪ねることが出来たので、こちらの方面については達成率120%くらいとなりました。初めて留学した土地で、いろいろアメリカの様々な側面について教えてくれたJohn Rifenbark三角はパーキンソンで不自由な生活をしていましたが、最近転倒して頭を強打してとても具合の悪い状態でしたが、一緒に3日間貴重な時間を過ごすことが出来ました。Johnの息子のWillも成長し、彼の素晴らしい息子、Benjaminにも初めて会うことが出来ました。低予算の飛行機だったのでNew York LaGuardia空港までと, 帰りも途中乗り継ぎ2か所で, 最後は早朝出発だったので空港泊となりました。ニューヨークへの帰り急いだため、ハイウェイパトロールにつかまりましたが勘弁してくれました。左折禁止無視、スピード、米国免許証不携帯の3重の違反です。Jailに入れられる可能性がありましたが、良い警官で助かりました。New York CityのCentral Parkでは蝉が鳴いていました。いままでアメリカでこの緯度では蝉はあまり鳴いていません。おそらく温暖化のせいでしょう。
日本に帰って、コオロギを実験室に入れ、翌日9月7日と8日、福岡大学であった、ペスタロッチ・フレーベル学会というのに、理事長代理で参加し、フレーベルにまつわる様々な歴史と試みを学びました。1日目の夜中の2時にふっと目を覚ましたらスーツケースが見当たりません。投宿する前のコンビニでお茶を買ったのを思い出し、そこに走っていって、なかったので、宿に戻ったら管理人が帰ってしまってロックアウト。行く場所がなく玄関前でうろうろ4時半まで待っていました。2日目の会場に行ったら、かばんはこちらで保護してもらってあって安心しました。年を取るとこういう馬鹿をやることが増えました。学会が終わって、大学時代の同級生で、転校し長崎大に行って医者になった友人を佐賀に訪ねましたら、寝不足のため寝てしまい、乗り越しで、行ったり来たりの馬鹿なことをしました。ついでにコオロギも採ってこようと思いましたが暑さのせいもあり、収穫は0でした。学会では、無知にもかかわらずいくつか質問を試みました。
そして14-16日今度は日本昆虫学会で弘前に行き、小集会でピノキオ幼稚園の所属で20分発表をしてきました。コオロギも捕まえました。帰り道は時間があったので青森で棟方志功記念館と三内丸谷遺跡を訪ね伊丹に戻りました。
20-21日は京都で日本野蚕学会でした。9月の最後はソウルでコオロギを採集してきました。一ヶ月のうち海外採集2件、学会3つは、おそらく自分でも新記録でしょう。ソウルは初めてでしたが、巨大な空港がありました。帰りは128番のボーディングゲートで、たどり着くのに大変長かったです。世界遺産のいくつもの宮殿のある地域に泊り、2日目は民族村を訪ね、豊かな農村文化に触れました。民族衣装を着ていくと入場料がただというのがあるらしく大勢の若者や子供たちが民族服を着て楽しそうでした。こうして、民族意識も盛り上がるし、景観がそれで変えられます。韓国も歴史的に中国や日本、ロシアのはざまで、征服されたり圧迫されたりし、戦後は朝鮮戦争というすさまじい内戦を経験し、大変な歴史をたどったが、その間に民主主義が鍛えられて、それが経済発展を支えてもきました。宮殿の前の広場では、音楽コンサートの隣で韓日米の連携強化と文政権批判の政治集会、その隣の通りでは、従軍慰安婦問題を取り上げる集会、日韓の無用な批判合戦に不動の姿勢で立ち尽くす若者と、人々も多様な主張をしています。道を聞くと、とても親切に教えてくれますし、日本語を勉強している人々の比率が非常に高い点に驚かされます。日本については中国語や韓国語を理解する人はほとんどおらず、この状況をそのままにすると将来日本は、韓国にもおいてきぼりされる可能性があると感じました。ソウルは外国人もたくさんいます。国際都市です。
こうして忙しい夏が終わり、大学は後期課程が始まりました。神戸大学は学生の留学機会を保障するため、最近は一年を4つの学期に分割しており、第3、第4クヲーターでは私は2年生に生物学の講義をやります。携帯で短い単語や、小さな部品を並べてそれで世界を理解するという若者の風潮の中で、「わかる」ということは何にも勝る感動をうることであるということをどうして教えるかがカギだと思っています。生物学は最近爆発的な発展があり、技術的にも急速な変化を遂げています。昔は何十億円もかけて購入した大きな機械に迫る内容のものが携帯電話サイズになり、1匹の虫から全ゲノムの配列が決められる時代になってきました。私も早稲田のグループと一緒に、エンマコオロギの仲間のゲノム配列を大体読むことが出来ました。生物科学においては、扱う内容も、タンパク質や核酸の化学から、生態学、遺伝学、免疫学、発生学、分類学、進化学、神経科学、生理学、行動学と、ありとあらゆるものを含みます。これを90分の授業14回でやるので余裕が全くありません。自分も新しい学問の発展を楽しみながら勉強してゆきます。これから冬にかけノーベル賞の選考が行われて行きますが、今年の本命はシャルパンティエとダナウドというフランスアメリカの女性組とシカゴ大学の中国系の人のゲノム編集技術クリスパー―キャス9という技術が大本命らしいです。基礎を作ったのは日本人ですが。
では、皆さん、スポーツの秋、食欲の秋、読書の秋を楽しみましょう。ラグビー日本チームもすごいですね。私は、野蚕学会の時、京都のホテルでロシア戦を見ました。アイルランドには勝ったけどまだまだ強豪ぞろいです。