2019年10月18日
旅立ってしまったオオタカ
今年の8月中旬、埼玉県北部環境管理事務所から傷病野生鳥獣の保護依頼の電話があり、8月下旬からピノキオ幼稚園で保護観察をすることになりました。保護観察する鳥獣はオオタカでした。幼稚園での猛禽類の保護は初めてでしたが、たまたま、大きめの禽舎が空いていたため、そこで生活してもらうことにしました。
オオタカは、日本では昔、殿様が鷹狩に使った鳥として有名です。最近ではカラスの駆除に活躍しているようです。ゴミを漁ったり、建物を糞で汚すことで嫌われているようですが、なかなか駆除の方法が見つからない中、オオタカを飛ばすとカラスが散り散りに逃げ惑う様子をテレビで見たことがあります。
現在でも鷹狩を趣味としている人たちがいるようですが、これらに使うタカは、外国から輸入したものを幼鳥のころから寝食をともにして調教したもののようです。日本産のオオタカは、捕獲はもちろんのこと、飼育も制限をされています。
一時期、減少傾向にあり、絶滅危惧Ⅱ類になりかけたオオタカですが、最近は「国内希少野生動植物種」に指定されています。
ピノキオ幼稚園では、このオオタカを担当の先生が献身的に面倒を見ていました。かなり愛情を注いでいたようです。最初の頃は餌をあげるときなど警戒していましたが、毎日声をかけて餌をやるようにしていると、だんだん近くまで寄ってくるようになったそうです。1ヶ月も過ぎる頃には、禽舎の外から 「ごはんですよ。ごはんを持ってきましたよ。」と声をかけながら近づくと、入り口の上にある屋根から下へ降りて待つようになり、羽をバタバタさせて、催促するような素振りまでみせるようになったそうです。
子供達の間でもオオタカはとても人気がありました。年中4歳児のクラスでは、園内で飼育・観察しているキジやハトなどと共に、今年度はオオタカを絵画(観察画)の題材にしたところ、子供達は、生き生きとしたオオタカの絵を描いていました。
片羽を損傷していたこのオオタカは、1m30cm 程の高さまで飛び上がるまでに体力が快復していきました。禽舎の中に入るまで、「まだだよ。まだだよ。」と言い続け、中に入ったら餌を与えながら、「しっかり食べてね。早く元気になってね。」といつも言いながらお世話をしていました。
このまま元気になって1年以上は生きられるかもしれないと思っていた矢先、残念なことに、10月12日の台風19号が去った数日後、オオタカの命は尽きてしまいました。飼育担当の先生の落胆は想像以上のものでした。とても残念で、私も大きな喪失感を抱きました。
傷ついた羽の状態では、自然界で生きて行くことは難しかったと思います。50日間という短い間でしたが、先生や子供達からたくさんの愛情を受けたオオタカは、とても幸せだったのではないだろうかと、今は思っています。
2019年8月下旬~10月中旬まで、ピノキオ幼稚園で保護していた元気だった頃のオオタカ
保護していた頃のオオタカの観察画(ピノキオ幼稚園4歳児)