2021年7月12日

夏に向かって

夏に向かって

竹田 真木生

 

 夏至を過ぎて、野外では植物が繁茂し、昆虫の活動がピークを迎えてきています。西日本では、今年は蛍の活動が旺盛で、ここ六甲でも、岡山県境の佐用町石井地区でも、たくさんの雄が、群舞を繰り広げ、同時点滅(すだき=集き)を行っていました。その頃、ケージの中ではオオムラサキが羽化し、優雅に群舞を繰り広げました。くるくるとお互いの周りに卍巴をする求愛行動も見られました。ケージの外は、ミツバチの活動が絶頂で、さかんに花粉や花の蜜を集めて帰ってきます。花粉はタンパク質源で、これを食べてたくさんの幼虫が育ちます。女王は1日1000匹以上雄卵を産みます。

 

 カブトムシの羽化も始まりました。石井の灯火には、すでにコクワガタやノコギリクワガタがやってきています。蚕の野生種である、黒っぽいクワコも飛んできています(蚕は人工的に改良された昆虫で飛翔能力がないが、クワコは飛べる)。ヘビトンボやスズメガなどの大型のものも飛翔してきています。

コロナがなければ飯綱山へ出かけて野外活動を楽しめたはずですが、昨年に引き続き、今年も断念せざるを得ないのは残念ですが、これも人生の勉強と考えて、次のチャンスをうかがいましょう。カナダやアメリカの西海岸は本来であれば、いい時期のはずですが、今年は気温が47度をこえてお年寄りの死亡がニュースになっています。カリフォルニアの北部にはシャスタ山という富士山に匹敵する美しい火山、レニエ山などいくつかの美しいコニーデ型の火山が並んでおり、そのあたりにアメリカシロヒトリが住んでいるため、私もよく調査に出かけました。ちょっと東に行くと、ヨセミテや、グランティートン(シェーンの映画に出てきました)、イエローストーン国立公園など素晴らしい景観が見られます。でも、今年は47度という高温になって、山が燃えたりしています。このままいくと大変なことになります。ホッキョクグマの住処がなくなりつつあります。

 

 野外の活動が滞る時は、おうちの中で出来ることに工夫して、できることをできる間にしっかりとやっておくことが必要です。それが役に立つ時が必ず来る、という楽観主義が最終的にはとても重要だと思います。外でなくてもできること、それはいろんなお話を聞き、いろいろなお話を作り、想像力と忍耐力を鍛えることです。幼稚園の3-5歳に当たる時期は、人間の発達のうえで、言葉を学ぶための最も大事な時期です。この期間に、子供たちの脳では神経細胞が猛烈な勢いで増殖し、突起を伸ばして、ネットワークを形成します。そのプロセスは、ものすごい試行錯誤のプロセスを経て、刈込みと、固定を行うことで、子供たちの脳の中に、言語と数の概念、コンテキスト・リーディング、社会性、美的な感性、倫理観、共感などの独特の世界が形成されていきます。子供を育てる大人は、厳粛な責任をこの時期の子供たちに負っています。子供と一緒に、もう一度穢れのない世界の物語を学びなおし、自分の言葉でそれを表現しなおし、子供たちと一緒にこの構築の感動を味わっていくことが大切だと思います。世界を自分たちが構築していくという実感を与えてあげることが重要です。ピノキオ幼稚園に前からある本や、私が少しづつ運んできている子供の本をどうぞご活用ください。私自身は、こちらに持ってくる本を決めると必ずもう一度読み返し、そのたびに幸福感を味わう経験を持ってきました。子供の本というのは必ずしも大人の本の簡単版だけではなく、大人の世界には見られない、やさしさや、純粋さや、心に残る友情や、美しいものに対する信頼に満ちており、幸せな読後感を大人にも与えるものです。少しづつ、少しづつ字を追っていく面倒くささ、注意力の持続の困難などは存在するが、それらを割り引いても、少しずつあたらしい世界をのぞいていく喜びと、それをたどって、あたらしい真理を学んでいく習慣を身に着けさせることが重要だと思います。ヴァーチャルも場合によってはいいこともあるでしょう。全面的にそれを否定するつもりはありませんが、読書の習慣は子供の発達にとっては、特別に、そして決定的に重要なものでしょう。

 

 ピノキオ幼稚園出身者には、芥川賞作家がいます(青山七恵、1983,2007年「ひとり日和」で受賞)。子供たちは、絵本に向かうので、アーティストが生まれても、それは素晴らしいかと思います。お話でも絵でも、音楽でもダンスでも、子供にとって、家庭の中でそれらが生まれ、自分もそれに参加できる喜びを教えてあげられたら素晴らしいと思います。創造性というのは、大人がちょっと手伝ってひき出してあげれば、次からつぎから湧き出してくるものだと思います。下手な作品でもよいのです。それを一緒に作り楽しむ雰囲気が重要だと思います。創造性というものは教え込むことがむつかしいものですが、まず、それをして楽しいという実感を子供が持つことができれば、あとは子供たちが自分でそれを発展させて行けるだろうと思います。子供たちが楽しんで続けられる対象を、見つけることはなかなか簡単ではありますまい。しかし、いろいろなきっかけを与えてあげることは重要です。できるだけいろいろな出来事を経験させてあげてください。

 私の作った作品を参考に上げておきましょう。私の大学にいたときの研究室で秘書をやってくださっていた、南家和香子さんが絵をつけてくださいました。鰹節につくかつお節虫という虫がいますが、それに武士をつなげて、tongue twisterにした遊びです。             

 

 

カツオブシムシブシ  文:竹田真木生 絵:南家和香子

 

 

2021・711